【ミライロ仕事図鑑】株式会社ジーコム
次世代を担う学生が、福岡という枠組みに囚われずに面白い取り組みに挑戦する企業を取材し、福岡商工会議所の会報誌「福岡商工会議所NEWS」の記事を作成する企画「ミライロしごと図鑑」。
本メディアでは会報誌にはおさまらなかった写真、インタビューを通して学生が得た気づきを紹介します。
8回目となる今回(会報誌11月号)は、株式会社ジーコムさんを取材しました!
今月の取材先:株式会社ジーコムとは?
「顧客を創るマーケティングリサーチ」と「組織を強くするビジネスコンサルティング」を軸としたサービスを展開する、福岡のマーケティング専門会社。1986年の創立以来、独自のフレームワークで、福岡や九州を中心に企業の事業課題解決をサポートしている。
今回取材に協力して頂いた方)株式会社ジーコム 代表取締役社長 新貝耕市さん
「リサーチとコンサルティングで 地場企業をサポートする」
貴社設立の経緯をお聞かせください。
30数年前、現在会長をしている村上と一緒に設立しました。 それまで、私はサラリーマンとして大阪でマーケティングの仕事 をしていたのですが、福岡で事業を始めようと思ってUターンし てきました。彼も福岡でマーケティングの事業を起こしたいと 考えていたので、一緒に創業することになりました。当時は、 広告専門の部署はあっても、マーケティングや企画専門の部署 が無い企業が多かったので、ジーコムの事業領域を、社外の 「マーケティング協力会社」として企業をサポートすることと設 定しました。
ジーコムさんは「マーケティングリサーチからコンサルティング まで一貫したサービス」を提供するとのことですが、それはど のようなサービスですか?
当時は、ちょうど東京でバブルがはじける前後だったので、 福岡はまだ景気が良く、現状の把握や課題解決というよりは、 広告宣伝で売上げを伸ばしていくという企業が一般的でした。 しかし、あるときから広告を打っても売上げが伸びなくなってき ます。それには様々な原因があるのですが、結論を言うとエン ドユーザー(最終的に商品を利用する人)の消費行動の変化で す。特に消費財やサービスを提供している企業は、生活者の 消費意識や消費行動を定期的に分析した上で、自社の商品やサービスの評価を常に把握していれば、売上げが下がった原因 をすぐに突きとめることができます。それゆえバブル後、景気 低迷の時期になると、「ビジネスのことが分からなくなったらお 客様の声を聴け」ということがよく言われるようになりました。 こうしてマーケティングリサーチのニーズが高まっていき、仕事 は増えていきました。そしてコンサルティングでは、クライアン トの社内に、新規事業ビジョンの作成や業務改善のプロジェク トを立ち上げ、クライアントとジーコムが事務局となってプロ ジェクトを動かしていく方式をとっています。つまり、私達はク ライアントが自ら検討し、改善策や事業ビジョンを生み出すサ ポートをしています。
ジーコムさんはリサーチのテーマをどのように決定するのでしょ うか?
独自調査テーマは、消費行動に関わるものから選んでいま す。エンドユーザーである消費者にサービスや商品を提供して いる企業は、生活者の消費行動や消費意識が一番気になるは ずです。首都圏の情報や日本全体のデータは、国の統計や大 手シンクタンクの調査で知ることができます。しかしその統計 通りに福岡の人々が生活しているとは限らない。だから福岡・ 九州を中心に旅行・飲食・働き方・趣味といった、毎年定点 で観測すべきテーマを、ジーコムが調査して発表しています。
リサーチをする際の質問項目はどのように作成するのでしょうか?
それぞれのリサーチでは必ず仮説を立てます。例えば観光市 場では、「あるエリアで観光集客をしたいが、昔よりも想起率が 低そうだ」とか。このような仮説を立てたら、観光レジャーの 購入頻度や目的地の選定方法、競合との比較など、仮説を検 証する質問を用意する必要があります。生活者の観光レジャー の行動プロセスをそれぞれの段階で拾っていく。どのような点 が競合に負けているのかということを突き止め、そこを補強す ればいいのです。消費財メーカーも同様で、認知度のある商 品なのに売上げが伸びない理由が、売り場で競合品が手に取 られているからだと分かれば、自社製品を手に取ってもらうため にはどうすべきかを考えればよいのです。消費者の行動プロセ スをいくつかの段階に区切り、どこに原因があるのかを突きと めることができるよう質問項目を決めていきます。
非常に興味深いです。ところで、社長は「マーケティング人材 の育成」が専門とのことですが、マーケティング人材とはどの ような人材なのでしょうか?
ある課題を解決するために、まず現状を整理し、問題点の 仮説を立てて検証する。そして解決方法について、いくつかア イデアを出し、そのアイデアで優先順位の高いものから実行に 移していく。この一連の考え方を課題解決アプローチと呼んで いるのですが、これを実行することが「マーケティング人材」に 求められます。この能力はビジネスはもちろん、日常生活でも 必要なことだと思います。例えば最近体調が悪いと感じた時、 どこに原因があるかを考えますよね。残業が続いたからかもしれ ないし、お酒を飲みすぎたからかもしれない。そんな時、その仮 説を検証し原因を突き止めて、仕事を早く終わらせるとか、お 酒を飲む量を減らすといった解決策を考えると思います。生活 改善をする時も、課題解決アプローチのような考え方をしてい るのです。
マーケティング人材はどのようにして育成するのですか?
自分で問題点に気づくことが一番重要なので、そのように 「気づく力」を身につけるために一対一のコーチングや、自分と は異なる他者の考えを聞き、意見をすり合わせることが必要とされるグループ討論を行います。意見の相違を小さくしていく という作業を通じ、「組織は共通の目標に向かっていくことがで きる」という気付きを得られますよね。その他、組織として人材 育成をする上では、時に上司が答えを示すのではなく、自分で 気づかせるために、投げかけをしていくことも必要だと思いま す。上司は経験豊富なので答えはわかっていると思いますが、 「こんなことはチェックした?」とか、「他にどんなことが考えら れる?」とか呼びかけることで、部下は日々の仕事の中で自ら 考えるようになります。すると自然に「現状把握・課題発見・ アイデア出し・優先順位の決定」という流れが習慣づき、マー ケティング人材の育成が実現できるのです。
なるほど! そんな社長が今までお仕事をされてきた中で、大切 にされているポリシーはありますか?
事業者視点ではなくて利用者視点、つまりお客様の視点で クライアントに提言させていただくことを常に意識しています。 事業者の方は長年やってきているビジネスそのものに関しては 詳しいのですが、時間が経つにつれ、エンドユーザーが見えな くなってくるのです。クライアントに生活者目線で再度ビジネス を考えていただくために、利用者の視点から提言するようにし ています。そしてもう一つ意識しているのは、人材を採用する ときに、その人のスキルではなく、人柄を重視して採用するこ とです。ビジネスをする上で人柄や信用は非常に大切ですし、 この人と仕事をするのは楽しいと思っていただける人材がいれ ば、ジーコムも良い印象を持っていただけますよね。安心して お仕事を依頼していただくために、人柄の良い人材が集まった 信用される会社でありたいと思っています。
社長のお話を通して、常に生活者目線に立ち、事業者と生活 者がともに幸せになれるようなシステムを構築しているジーコ ムさんの事業の素晴らしさを強く感じました。 新貝社長、貴重なお話をありがとうございました!
学生インタビュアーの感想
WANメンバー園田映美音さん(九州大学1年生)
最近よく「マーケティング」という言葉をよく耳にしますが、マーケティングとは具体的にどのようなことをするのかよく理解していませんでした。しかし今回の取材を通して、「探り当てたいテーマを設定して調査する」というマーケティングの流れを詳しく伺うことができ、非常に興味深かったです。またどの事業においても、ジーコムさんは常に「エンドユーザー」を第一に考えているのだということを強く感じました。
特に印象に残ったのは、「マーケティング人材」に関するお話です。マーケティングはもちろん、大学生や社会人にとっても「自ら気づく」ということは、あらゆる場面で非常に重要だと感じました。しかし「自ら気づく」というのは簡単なことではないと思います。今何をすべきなのかということを常に考え、アンテナを張っていなければ気づくことはできません。今後、「気づき」までのプロセスを意識して、自らの行動を見直していきたいと思います。
新貝社長、ありがとうございました!